このときが一番危険なときです。
逃げることも威嚇することもできないのですから。
なので、羽化は夜明け前の生物が活動していない時間帯に行われます。
しかし見つけたのはもう夜が明けてからです。
なかなか抜け出せないのでしょう。
どうやら羽が引っかかっているようです。
羽化に長い時間がかかってしまうと、羽が固まってしまい、羽をのばすための体液がスムーズに行き渡らず、縮まったままになってしまい動くことができず、すぐに死んでしまいます。
ですから羽化は、いろんな意味で時間との勝負なのです。
この時点でもうヤバイのです。
殻の下からは下痢のような便が出ていました。
本来は完全に羽化して体液で羽を伸ばし、完全に羽が固まるまで待って、お腹の中を空っぽにしてから飛び立ちます。
その宿便がもう出てしまったのでしょう。
いつまで経っても抜け出る様子はありません。
体力も相当使ってしまったようです。
ここでちょっと手助けしてやればいいのかもしれませんが、迷いました。
基本的には野生の状態に手を貸すことはしない、というのが私の考えです。
考えた末、そのまま見守ることにしました。
しかしいつまで経っても抜け出せません。
とうとう夜になってしまいました。
翌朝まで生きているか心配です。