以前、村ではベリーAとネオマスカットを作って出荷していましたが、巨峰、ピオーネなどにおされ、多くの農家が当時まだ珍しかった、キウイフルーツの栽培へ移っていきました。
細々とブドウ栽培を続けていた家では、マスカットオブアレキサンドリアや巨峰、ピオーネなどに代わっていきましたが、今ではみんな自家用に作っているだけになりました。
しかしそこは元々出荷していたほどですから、見事なブドウを作ります。
これが店に並んだら数千円になるのになあ、といいながら腹一杯ブドウを食べます。
やはり田舎は贅沢ですね。
いろんな果物を作ってきましたが、ブドウが一番手間がかかり、重労働です。
しかし見事な房に実ってくれたときは、手をかけた分だけ喜びもひとしおです。
芸術品といってもいいくらいです。
出荷していたときは、見事な房(秀)などもったいなくて食べられるはずもなく、すべて出荷していました。
それでも一回は食べてみようと、秀の一房を家族で食べたものです。
そのときの感想は、秀も並も味は変わらないなあ、というものでした。
当然といえば当然です(笑)。
産地ではいいものは食べていないのです。
いいものは出荷に回すのです。
大間のマグロなどがいい例です。
青森県の大間はマグロ漁業で有名ですが、釣れたマグロは値のいい都会に出荷し、地元ではもったいなくて食べることが出来ません。
漁師さんもマグロのいいところは食べず、切り取った一部分を食べていました。
このように、産地では意外と、そのもののいいものは食べていないのです。
ですから、今ブドウをおなかいっぱい食べることが出来るのは、幸せなことなのです。